令和7年 第4回 定例会報告

    令和7年 第4回 定例会

    財政援助団体の適正管理と監督体制強化について

     先般、渋谷区において認定NPO法人フローレンスを巡る問題が報道されました。この団体は現在も中野区とも委託・補助など一定の関わりを持っていることから、決して対岸の火事ではなく、中野区にとっても重要な課題です。近年、全国的にNPOによる補助金や委託費の不適切使用が報じられ、公金チューチューと揶揄される事態も生じています。中野区でも旧環境リサイクルプラザや旧桃ケ丘小学校でのタイケン学園など、区有施設貸出や補助金活用を巡り裁判や不透明運営に至った事例があり、公益性が著しく欠如しているなどの批判を受けてきました。こうした不信を招かないためにも、公益性の担保、交付目的の厳格な遵守、交付後の適正管理と監督体制の強化が不可欠です。以上を踏まえ、渋谷区での事案を鑑みて、中野区は同様の公金リスクをどう認識しているのか、今回の事案を一法人の問題として限定的に捉えるのか、あるいは補助金交付制度全般の課題として捉えるのか、区の考えを伺います。

     補助金等交付要綱に基づく適正な執行は、中野区政への信頼と公益の担保に直結する重要な課題です。不適切な執行が判明した場合には、速やかな返還命令や改善指導をして、事業の継続可否や再発防止策まで含めて一貫した対応を取ることが、透明性確保と抑止効果の観点から不可欠だと考えます。そのようなことから、これまで中野区において、当該法人によるひとり親家庭支援や訪問型病児保育、医療的ケア児家庭支援など、類型に該当する補助事業で、補助金等交付要綱違反に対する返還命令および改善指導の発出実績はあるか伺います。

     今回の事案は、大きく二つの問題があったと考えます。第一に、事業者側の知識不足で【抵当権】と【根抵当権】の違いを十分に理解していなかった点です。【抵当権】とは、簡潔に述べれば、一点の借金のための担保であり、例えば住宅ローンや特定の設備のローンなどで、【根抵当権】とは、極度額という枠を決めて将来発生する不特定多数の債務をまとめての担保であり、枠内であれば繰り返し借り入れ返済できます。両者の性質は大きく異なるにもかかわらず、この違いを理解していなかったこと、さらに補助金交付要綱に関する知識も不足していたことが問題でした。悪意がなかったとしても、結果的に不適切使用や区民の不信感につながるリスクを生じさせています。第二に、行政側のチェック体制の不十分さです。例えば、事業者から抵当権設定の申し出があった段階で根抵当権設定は認められない旨を指導し、その後に登記簿謄本の提出を求めていれば、仮に根抵当権が設定されていても一目で確認でき、改善指導が可能であったと考えます。こうしたことから、補助金や委託事業を通じてNPOなどが区と連携して事業を行う際には、申請・審査段階と事業実施中の両面で適正なチェック体制を整えることが重要です。申請・審査段階では提出書類や事業計画、収支予算、過去の実績などを精査し公益性を確認することが求められます。一方、事業運営中には定期的な進捗報告や収支報告、領収書などの確認、現地訪問、必要に応じた改善指導や返還命令の発出など継続的な監督が不可欠です。今回の事案は運営中に問題が顕在化したものであり、事業実施中のチェック体制の有効性が問われています。そういったことから、中野区において申請・審査段階の審査体制と事業運営中の監督体制は、例えば登記簿謄本の確認など具体的にどのように行われているのか。また、問題発生時にどのような対応フローを備えているのか伺います。

     今回の事案が発生した原因については、先に述べた通り、事業者側の制度理解不足と行政側のチェック体制の不備が重なったものと考えます。中野区においても、補助金等交付規則第16条において、補助事業で取得した財産を譲渡・交換・貸付・担保に供する場合には区長の承認が必要とされています。この条項に照らせば、【抵当権】も【根抵当権】も原則禁止されるように読めますが、実態としては区長の承認を得れば【抵当権】の設定は認められており、制度運用上の解釈に幅があることから、非常に分かりにくい状況となっています。特に【根抵当権】は、将来の不特定債務を担保するものであり、補助金で取得した財産を目的外に供するリスクが高く、制度上も原則認められない性質のものです。こうした点を踏まえると、規則または要綱において【根抵当権は禁止】と明記するなど、より明確で誤解のない表記が求められると考えます。制度整備の必要性についてどのように考えているか、区の考えを伺います。

    オレンジカフェの推進について

     日本では高齢化に伴い認知症の方が増加し、地域の支援体制の充実が重要な課題となっています。中野区でも、認知症の方とご家族が安心して暮らせる環境づくりが求められており、孤立を防ぎ心身の健康を保つためには、外出の機会や気軽に集える場が欠かせません。認知症のある方は、筋力・体力低下を伴う身体的フレイルや、つながりの減少による社会的フレイルを抱えやすい傾向があり、両者が相互に影響し合うことが指摘されています。これらの予防・緩和には、地域での外出機会と集いの場の整備が必要です。こうした場は、本人にとって社会とのつながりを維持する機会であり、ご家族にとっても情報交換と支え合いの場となります。そのようなことから、認知症の方やご家族等の集いの場としてオレンジカフェは必要であり、中野区も基本計画として2025年までに25ヶ所の整備を目標としています。しかしながら現在は22ヶ所にとどまっているので、目標未達成の理由及び既存22ヶ所の安定運営の為に、これまでどの様な支援を行ってきたか伺います。

     オレンジカフェの設置に関しては、現状では特に規定がないため地域ごとに偏在が見られ、その有無によって地域での利用度、認知度に差が生じています。本来であれば各地域に均等に設置されることが理想ですが、まずはオレンジカフェを広く知っていただき、実際に足を運んでいただくことが先決だと考えます。認知度向上のためには、区役所1階ナカノヤでの開催や、ナカノバで行われる他イベントとの合同開催、多世代の方々に知っていただくためには、大手カフェチェーンやスーパーのカフェスペースを活用する方法が考えられます。さらに、地域での認知度を高めるためには商店街や町会等の団体との協力、若年層の参加促進には大学などとの連携、また他区で実施されている有料老人ホームでの開催なども考えられます。いずれも中野区主導の出張型やイベント形式で展開することで、認知度の向上と地域への浸透を深める取り組みが必要だと考えますが、区の考えを伺います。

     オレンジカフェに参加することで地域の方々が交流する機会が生まれ、継続的に通いたくなる居場所づくりにつながることは重要です。しかし、それだけでなく、区が行っている高齢者支援、認知症支援、養護者の負担軽減を目的としたレスパイト支援など、各施策へと円滑に繋げていくことが総合的な支援体制の構築に不可欠だと考えます。オレンジカフェを単なる交流の場ではなく、必要な支援へとつなぐ入口として活用することで、地域全体での認知症理解促進や孤立防止、養護者支援の強化など多面的な効果が期待されます。オレンジカフェを活用した総合支援体制の構築についてどのように考え、今後どのように取り組んでいくのか、区の考えを伺います。

     オレンジカフェには、認知症の方やご家族のみならず、地域住民や認知症サポーターなど多様な方々が訪れています。私自身も何度か参加しお話を伺う機会がありましたが、利用者の意見を反映するためのアンケートを記入した経験はありません。運営者同士の連絡会はコロナ前までは開催されていたようですが、現在は行われておらず、利用者の声を直接聞く機会も十分ではないように感じます。利用者の声を今後の施策に生かすためには、運営者、ご家族を含む当事者、支援者それぞれからアンケートを取り、意見を集約して施策に反映していく仕組みが必要だと考えます。特にアンケートを各運営者に任せるのではなく、中野区が主導して共通のアンケート形式を設けることで、意見を収集し、施策に活かすことが可能になると考えますが、区の考えを伺います。

     中野区は次期基本計画(素案)の重点プロジェクトとして認知症施策を掲げております。その実現のためには、区民に広く取組内容を周知し理解していただくことが不可欠です。現在、中野区で行っているオレンジカフェの広報は区報及びホームページに限られていますが、ケアラーをはじめ支援者や区民全般に広く知っていただくには十分とは言えません。例えば、LINEなどのSNSを活用することは有効な手段と考えます。また、渋谷区では認知症専用ウェブサイトを運用し、オレンジカフェを含む認知症関連情報を分かりやすく整理しており、区民が容易にアクセスできる環境を整えています。中野区においても、多世代に向けて分かりやすく情報を届ける環境整備が必要だと考えますが、区の考えを伺います。